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歩いても歩いても

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楽しいと言うより、ほろ苦い。
温かいと言うより、切ない…かな

若くして亡くなった長男の命日に、老親の住む実家に集った次男家族と長女家族。ある一家のほんの2日間(正味24時間?)の出来事を綴った物語なのだが、予告編を見る限り心温まるホームドラマかと思いきや、意外にそうでもなかった。後方でやたらと大笑いをしている年配男性がいたが、私は笑えなかった。何気ない家族のやりとりの中に、身につまされる内容が多かったからだろうか?自分自身を夏川結衣演じる嫁に投影したり、娘役のYOUに重ねたり…そうして物語にのめり込んで見ると、結構しんどかったぞよ。たぶん、見る人の(家族関係における)立場によって、印象はかなり異なるのだろうなあ。

時に、芸達者な樹木希林演じる義母の言動に、底意地の悪さを感じて背筋が寒くなった。映画タイトルの由来だって、結構皮肉が利いているし。年を取ると人間は円くなるなんて、たぶん若い頃尖っていた人にこそ当てはまることなんだろう。善人、良妻賢母と言われた人は、寧ろ、いい加減周囲に気遣いすることに疲れて、本音で生きたくなるものなのか?案外、タガが外れたようにズケズケとした物言いで、身近な人間を驚かせているのかも。ここだけの話、義母は定年退職を迎えた義父に「これまで苦労をかけたな」とねぎらいの言葉をかけて貰った時に、「はい、散々苦労しました」と(冗談ではなく真顔で?!)答えたそうだ。妻の意外な返答に、義父は心底驚いたんじゃないかな?何年か前の正月の帰省で台所仕事をしていた時に、義母からその話を聞かされて、私も本当に驚いた。日頃の義母の言動からは想像もつかない言葉だったからだ。

家族関係は難しい。特に子供がそれぞれ大人になり、独立してそれぞれの家庭を持った後の親子関係、兄弟関係は、他人(嫁、婿)が入り込むことによって確実に変質する。互いに気を遣いあい、牽制しあう。時には打算も働く。それは良い悪いの問題ではなく、成り行き上、そうならざるを得ないものなんだと思う(子供が大人になる、親から自立するって、つまりはそういうことなんだろうし)。そうした家族関係の軋轢が、是枝脚本の鋭い人間観察によって容赦なく露わにされたのが、この家族のわずか2日間の物語なのかなと、私は受け止めた。亡くなったわが子への執着も親ならではのもので、無下に否定できないだけに、周囲の人間は気を遣うし、心を傷つけられもする。墓参りのシーンでは温かさを感じつつも、全体的にはほろ苦くて、切ない印象が強いかな。

私は夫婦でこの映画を土曜日の午後に見たのだが、観客の年齢層はかなり高かった。見渡すとシニアばかり。シニアの間で口コミ人気でも広がっているのか?シニアの眼にはどう映ったのだろう?樹木希林の言動に納得したり、溜飲を下げたりしたのだろうか?

【どうしても気になった些細な事柄】

80_4 ←これが、その証拠写真(笑)

高橋和也演じるYOUの夫が義母におべんちゃらを使いながら、子供たちと台所で麦茶を飲むシーン。麦茶をゴクゴクと飲んでいる間ずっと冷蔵庫が開けっ放しなのだ。おいおい電気代の無駄だ、と思わず突っ込んでいる自分がいた。たぶん、婿のいい加減な性格の一端を示す描写なんだろうけれど。是枝監督、芸が細かいと言うか、人間観察が嫌らしいくらい鋭いと言うか…



◆『歩いても歩いても』公式サイト:
www.aruitemo.com/

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