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しあわせのかおり~幸福的馨香~

Photo 見終わった後、思わず中華料理を食べに行った…
いつにも増して、おいしかった(笑)

今年も例年通り、見ている本数としては圧倒的に洋画が多いはずなのに、なぜか心に残る、ここに感想を書かずにはおれない作品は邦画が割合に多い。この作品も、そんな1本。

舞台は金沢。しかし、私の知る金沢ではない。観光客が見ることのない、すっぴんの金沢。地元の人々の生活が息づく、ジモッティな金沢。

デパート営業部勤務の貴子は、デパ地下の新たな目玉にと、地元で人気の中華料理店「小上海飯店」の出店誘致を任される。しかし老練の店主、王はけんもほろろに、その申し出を断った。それでも毎日ように王の店に出向き、日替わり定食を食べるうちに、貴子はいつしか仕事を忘れて、その味に夢中になる。えも言われぬおいしさ~心がホッとするような”優しい味”なのだ。

物語が進むうちに、徐々に貴子と店主、王の人となりが明らかになる。それぞれに、家族にまつわる心温まる思い出と傷心の過去があった。

一言で言うと、地味な作品だ。特にドラマチックな展開があるわけでもない。寧ろ容易に読める筋書きだ。そう、途中までは。

ある出来事をきっかけに、貴子は王の押しかけ弟子となる。それほどに、貴子は王の料理に魅せられた。この作品、「グルメ映画」とも言うべき様相を呈している。次から次へと喉が鳴るような料理が、冒頭から登場する。地元の新鮮な食材を使った、目にも楽しい中華料理。料理単独のクローズアップシーンも多いので、<b>料理はこの作品のもうひとつの主役</b>なんだろう。

王役の藤竜也と貴子役の中谷美紀は、この映画の出演に向けて中華料理店で特訓したと言う腕前を披露する。う~ん、凄い!作品を見た限りでは、王の頑固一徹な料理人気質に貫禄を感じ、貴子がその弟子として徐々に料理の腕を上げて行くさまにはワクワクした。掛け値なしに、二人の俳優は料理人になりきっていた。

俳優は役柄を通して、数多くの人生を経験する。それまでは一切素養がなくても、時には音楽家として楽器を弾きこなし、教師として教壇に立ち、料理人として見た目にもおいしそうな料理を作り上げる。これこそ俳優たる才能だろう。今回も、その才能に快哉を叫びたくなった。

劇中、一番印象に残った台詞は、
「一生懸命生きようとしているあの子に、あなたは何を言うんですか?」
と言う王の叫び。普段は言葉少なで木訥な彼の、内に秘めた情の濃さと熱さを感じた。これは予告編でも耳にすることができる。やっぱり、この作品の見せ場のひとつかな。

見せ場はクライマックスにもある。それは、王や貴子を取り巻く人々の、優しい気遣いが導く奇蹟のようなもの。思わず胸が熱くなった(特に八千草薫田中圭が演じる、「??」と「農家の3代目」は常に二人を見守る存在。物語の”その後”が気になるなあ…)。

Photo_2 この作品には悪人は出て来ない。正確に言うと直接的に人間の悪意は描かれない。それが物語の抑揚を削ぐことにもなり、その結果、全体的に平板で、地味な印象の作品になってしまったのかもしれない。しかし、
「地味で何が悪い」
と反論したくなるような滋味深~い作品なのだ。

関東でも上映館は銀座のシネスイッチ銀座と川崎のチネチッタのみ。何という少なさだろう(もしや中国の食を巡る様々な問題が、暗い影を落としているのか?)。これでは多くの人の目に心に、この作品が届かない。次善の策として、DVD化された暁には、是非ご覧あれ!

【ほぉ~と思ったこと】

中国の紹興では、地酒である紹興酒を、娘が生まれた年に瓶に入れ、土中に埋めて醸成させた後、娘が結婚する時に、その紹興酒で祝杯を挙げる慣習があるそうだ。これと似たような慣習は沖縄にもある。沖縄では娘が生まれた時に泡盛を瓶に入れて保存し、娘の祝い事で飲む習慣があるそうだ~と言う話を以前テレビで知った。さすがに琉球王国の時代、中国との交易が盛んだっただけあって、中国の慣習が伝来していたんだね。

【山定食 海定食】

日替わり定食はこの2種類。と言っても、それぞれ日替わりで、多彩な「山の幸」「海の幸」がメインに登場するのだ。中でも卵とトマトを炒めただけの「卵トマト炒め」は、素材も調理法もシンプルなだけに、料理人の腕が問われるのだろうか?

【大人の純愛】

「あなたがいたから私も頑張れた」って、もしかして愛の告白なのでは?この控え目さ加減が素敵かも。

◆「しあわせのかおり」公式サイト:http://www.shiawase-kaoru.jp/

【主演ふたりのインタビュー記事がありました!】

◆藤竜也(産経ニュース・インタビュー):http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/081018/tnr0810180759000-n1.htm</a>
中谷美紀(シネマぴあインタビュー):http://www.pia.co.jp/cinema/interview/081016_shiawase/shiawase_in.html

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