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プレステージ(The Prestige)

60_3   「目を凝らせ」―この言葉が劇中何度となく繰り返される。観客は舞台を見ているようで肝心なところは何も見ていない。それが大仕掛けのマジックの成功を支えている。しっかり見ているつもりでも、たぶん騙されてしまうのだ。この場合、逆に騙されない者は楽しめない。そして種を明かされようものなら、途端に興ざめしてしまう。トリックとはそういうものなんだろう。

 この作品は男性マジシャン二人の確執を軸に物語が展開するのだが、マジックに取り憑かれた二人の対決が陰湿で、ネチッこくて、男性のライバル意識や執念や怨念も女性に負けていないなと思った。この二人を人気俳優ヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールが演じているのだが、二人の間を行き交うヒロインが今をときめくスカーレット・ヨハンソン。

40_440_5   しかし、この作品の演出を手掛けたクリストファー・ノーラン監督、彼の名声を一気に高めた『メメント』を私はあいにく未見なのだが、その後の『インソムニア』『バットマン・ビギンズ』を見ても感じたと同様に、女性を描くことがあまり得意ではないのかな?当代きっての”華”であるはずのスカーレットの魅力が本作ではあまり伝わって来ない。露出度の高い衣装で惜しげもなく肢体を晒してはいるものの、強烈な男性二人の対決の影に隠れて、彼女の存在感が希薄なのだ。『マッチ・ポイント』の彼女の方がずっと良い。

 物語の展開も、印象としては『デジャブ』で感じたようなモヤモヤが残った。「な、なんだこの転調は?!」―まったくもってトリッキーだ。単なるサスペンスじゃないんだよね。舞台の19世紀末から20世紀初頭は工業化の時代、科学の時代であったのだから(実在の人物を登場させて”リアル感”もそこそこまぶしていたり…) 、”ソレ”もアリなんだろうが、おそらく想像するに、鬼気迫る二人の心理劇がこの作品の一番の”肝”であり、物語の整合性や合理性よりも優先されたのだろう。

 キャスティングは主役級の3人を始めなかなか豪華。名優マイケル・ケインに、お久しぶりのデヴィッド・ボウイが脇を固めている(そしてLoRのゴラムも!)。ボウィはさすがに年を取ったなあ…仕方ないが、少しショック。米アカデミー賞撮影賞、美術賞にノミネートされただけあって映像も美しい。トリックの監修も当代随一のマジシャン、デビッド・カッパーフィールドが手掛け、いかにもお金をかけた映画という感じだ。こういう大仕掛けの”トリック”は観客も好きだろう。

 Yahooのレビューサイトには既に20以上のコメントが寄せられている。それらをザッと読んでみたが、本当に感想、評価はひとさまざま。たぶん、そういう映画なんでしょう。『ザ・シューター』よりは、個人的にはこちらの方が好み。(5月17日、試写会にて)

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