« 『レオナルド・ダ・ヴィンチ―天才の実像』展(東京国立博物館) | トップページ | 『不都合な真実』についての覚書(2) »

『不都合な真実』についての覚書(1)

Uip_japan 拡大路線は止めるべきなんだろう。しかし止めないんだろうな…

 アル・ゴア元米副大統領が、自身が出演するドキュメンタリー映画『不都合な真実』のジャパン・プレミア出席のため1月下旬来日した。「筑紫哲也ニュース23」では、そのゴア氏を招いて、地球温暖化問題に関する特集を組んで放映した。

 この100年?の間に地球の平均気温が0.7度上昇しただけで、東京都の面積に匹敵する北極の棚氷が崩壊したり、世界各地の氷河が後退したり、集中豪雨の一方で干ばつもあり、地球温暖化がもたらした異変、異常気象は、私達人間だけでなく、地球上のあらゆる生き物の生命を脅かしている。

 カエルが次々と絶滅しているという話には背筋がゾッとした。温暖化によってツボカビと呼ばれるカビが体内で異常繁殖し、死に至らしめているという。冬眠の時期も年々遅れ、彼らの生体リズムにも異常を来している。それもカビに対する免疫力を低下させている一因かもしれない(ペットブームによる外来種の輸入にも生物学者らは神経を尖らせている。国内に持ち込まれる外来種にツボカビを体内に宿したカエルがいる可能性が少なくないからだ。それがたとえ一匹であっても、ツボカビはあっという間に伝染し、国内の在来種を絶滅に至らしめる危険を孕んでいる)。

 時には100kmも泳いで移動するというホッキョクグマも今や絶滅危惧種に指定されている。時折挟み込まれる(たぶん『不都合な真実』からの)映像では、せっかく氷原の端に辿り着いても、薄氷のために体を乗せたとたん崩れてしまい、いつまでも冷たい水の中を泳ぎ続けなければならないホッキョクグマの姿が映し出されていた。そうして溺れ死ぬホッキョクグマが後を絶たないのだそうだ。

 私達人類が文明生活を享受するために排出し続けるCO2が、地球全体の命を脅かしている。その責任は重い。 自国の事だけを考えれば日本の”少子化”は、国力維持において由々しき事態なんだろうが、地球規模で考えたら、日本という小さな島国のサイズに見合った人口に戻りつつあるということなのかな?とふと思った。それに伴って経済活動も縮小して行き、経済的豊かさも失われて行くのかもしれないが、経済的豊かさが人間としての幸せに直結しているかと言えば、そうとも言えない現実が今そこかしこに見えているし…

 特にCO2の排出増加には経済活動の拡大が大きく関与していると思うが、そうなると近隣の大国やインドの経済発展は、地球温暖化へ拍車をかけることになるのは間違いないのだろうか?河川への工場の廃液垂れ流しの話を聞くにつけ、かつての形振り構わぬ日本の高度経済成長時代が想起されるし、彼の国に本格的なモータリーゼーション時代の到来となれば、大気汚染は対岸の火事とは行かなくなるだろう。九州は大丈夫なんだろうか?否、それどころか地球温暖化は、恐ろしいまでに加速するのだろうか?

 経済的豊かさを追求する拡大路線が地球のどこかで続く限り、地球温暖化は止まらないのだろう。私達人類は、母なる地球に迷惑のかけ通しだ。

映画『不都合な真実』を見ての感想

 大学時代から地球温暖化について注目して来たというゴア元米副大統領。そのゴア氏が地球温暖化問題の啓蒙の為世界各地で精力的に行っているスライドトークの模様に、時折、氏の評伝(その生い立ちから現在まで)が挟み込まれたドキュメンタリー。エコ・サンデー(日本テトラパック社の協賛で指定の映画館に限り500円で見られる企画)を利用して家族で見て来た。

 元々、本作中のスライドトークは米市民に向けてのものなので、正直言って「これは地球温暖化問題とは直接関係ないだろう」と思える発言もあった(民主主義礼賛や共産主義云々など。もちろん海外向けのトークでは削除されているとは思うが)。同様の意味で、ゴア氏の評伝も一部(大統領選敗北の映像等)蛇足な気がした。少し感傷的過ぎるかな。

 それに地球温暖化の問題は人類だけでなく、地球上のすべての生物の存亡に関わる問題だ。「あなたの子に、今ある地球環境を残そう」という訴えは、(よく聞くスローガンではあるが) 人間中心主義の傲慢に思えた。たぶん、そういう訴えかけが啓発に最も効果的という戦略なのだろう。

 私達人類は、もしかしたら地球に巣くうガン細胞なのかもしれないなあ。そもそも地球を短期間にここまで痛めつけたのは人類なのだから。特に現代人の私達。

 とは言え1000回以上、回を重ねて来たと言うだけあって、そのトークは実に見事だ。科学的データをよどみなく提示し、図解も多用、時にはアニメや大仕掛けのパフォーマンスで笑わせ、説得力十分、かつ分かり易い。さらにエンドロールでは、よくもまあ、これだけのメッセージを思いつくものだと感心するほど、具体的で、実効性の高い提言が次々と映し出されていた。どれも参考になるものばかりだ(私自身すでに実行していることも幾つかあった)

 地球温暖化の問題をこれほどわかりやすくコンパクトにまとめた学習教材はないと思う。地球温暖化について興味のある人、ない人に関わらず、出来るだけ多くの人に地球の危機的状況を理解する為にも見て貰いたい作品だと思った。(因みに私が足を運んだTOHOシネマズでは、毎回満席だった。おそらくこんなことは、このシネコンが開業以来
初めてのことではないか。)

 
ともあれ、地球温暖化阻止の為に今日から自分でできることを!と思わずにはいられない映画である。

|

« 『レオナルド・ダ・ヴィンチ―天才の実像』展(東京国立博物館) | トップページ | 『不都合な真実』についての覚書(2) »

映画(2007年)」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。